大田区下丸子のひまわり歯科 副院長の佐藤です。
前回から歯周病のお話をしてきましたが、歯周病を悪化させてしまう直接的な原因の他に、間接的な原因も存在します。本日はその「リスクファクター(危険因子)」についてです。
歯周病のリスクファクター(危険因子)とは?
歯周病の直接的な原因はプラーク(歯垢)です。プラークは単なる汚れ、磨き残し、ではなく細菌の塊。プラークが、歯茎や歯を支える骨を壊していきます。
歯周病を進行させる原因としては、その他に間接的な原因も存在します。それらを「リスクファクター(危険因子)」と呼びます。
(1)局所性のリスクファクター(お口の中の環境などによるもの)
(2)全身性のリスクファクター(生活習慣などによるもの)
以上の二つ分けられ、具体的には下記のようなものが挙げられます。
(1)局所性のリスクファクター(お口の中の環境などによるもの)
・歯磨きの不良
きちんと歯磨きをしたつもりでも磨き残しがあると、それらを栄養源に細菌が増殖し、プラークが形成されます。プラーク1mgに1億個以上の細菌が存在しているとも言われ、まさに細菌の温床、細菌の塊なのです。プラークは、歯周病や虫歯の原因となります。
・唾液の分泌量が少ない、口呼吸
唾液には、洗浄・殺菌・抗菌作用があります。よく噛まない(噛めない)、もともと分泌量が少ない、などの理由から唾液の持つ効果が得られず、歯周病が進行しやすくなります。口呼吸が習慣になってしまうと、口腔内が乾燥し、プラークがたまりやすくなります。
・歯並び、部分的に歯がない
歯並びが悪く上下の噛み合わせが悪いと、清掃しづらく細菌が溜まりやすくなります。部分的に歯がないと、残っている周りの歯に負担をかけることになり、歯周組織のダメージにつながります。
・歯ぎしり、くいしばり、かみしめ
咬合性外傷という、歯、歯周組織、顎関節などがダメージを受けてしまう疾患があります。咬合性外傷の原因は、歯並びが悪い、噛み合わせが悪い、歯ぎしり、くいしばり、かみしめなどが挙げられます。常に歯や歯周組織にダメージが加わり、歯周病が進行しやすくなります。
・不適合な被せ物や義歯
被せ物や義歯が合っていないと、噛み合わせが悪くなる、周辺が不衛生になる、などの理由で歯周病が進行しやすくなります。
(2)全身性のリスクファクター(生活習慣などによるもの)
・喫煙
タバコに含まれるニコチンにより、プラークや歯石が付着しやすくなります。ビタミンCが壊され、歯茎の成分コラーゲンがうまく作られなくなります。免疫機能の低下、血行不良にも陥りやすくなり、歯周病が進行しやすくなります。
・ストレス
ストレスが強くかかると、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、ストレスは自律神経にも影響します。自律神経が乱れると、唾液の分泌量が減少しドライマウス、口腔内の環境の悪化につながります。
・不規則な食習慣 生活習慣
これらは免疫力の低下につながります。また、飲食をする回数や時間が不規則になると、唾液による自浄作用が機能しにくくなり、歯周病のリスクも上がります。
・女性ホルモンの影響
歯周病の原因菌の中には、女性ホルモンを特に好んで増殖するものがあります。女性ホルモンには、歯周病菌の増殖を促進させたり、歯茎の炎症を悪化させたりする作用があります。少しの刺激で歯茎から出血しやすくなる、腫れてくる、むずむずする、などの症状は、ホルモンバランスの影響で末梢血管が拡張し、炎症反応が過度になるためです。妊娠中や更年期、閉経後は急激なホルモンバランスの変化に伴い、特に歯周病リスクが高まります。
・糖尿病
糖尿病と歯周病は深い相関関係にあります。高血糖になると、白血球や免疫に関わる細胞の機能が低下し、病原菌への抵抗力が弱くなります。血管の再生力も低下するため、歯周病にかかりやすく治りにくい、という状態になります。歯周病になると、歯周病菌が産生する炎症性成分が血中に分泌され、これがインスリンの働きを悪化させ血糖値のコントロールを阻害すると言われています。
・骨粗しょう症
骨粗しょう症になると、歯を支えている骨(歯槽骨)も骨密度が低下し脆くなり、進行すると歯がグラグラと動くようになってきます。そうなると咀嚼が難しくなり、栄養をバランスよく摂取できなくなり、さらに骨密度が低下する、といった悪循環に陥ります。
・肥満
歯周病と肥満も相関関係にあり、肥満が歯周病を悪化させる、歯周病が肥満を引き起こす、といった関係が解明されてきています。脂肪細胞でつくられる炎症性サイトカインは、歯槽骨を破壊し、歯周病を発症、進行させる作用があります。また、歯周病の原因菌が出す毒素(LPS)や炎症により出る化学物質が全身の脂質代謝に影響を及ぼしていることもわかってきます。
最後に
歯磨きでお口の環境を整えると共に、生活習慣や食習慣などを整えることが、虫歯、歯周病の予防だけでなく全身疾患の予防にもつながります。
ご自宅でのケア、歯科医院でのプロフェッショナルケア の両輪で、予防に取り組むことが大切です。